Monthly Archive: 5月 2005

『 美しき地球の記憶 』

屋久島から東京へ移動し、映像と音の編集作業に入り、音楽を作り・・・
あっという間に1ヶ月の時間が経過した。本当は長くても2週間くらいで
終わらせる仕事だったのだが、間にゴールデンウィークがはさまったり、
処々の事情で、スケジュールがどんどん後ろにずれこんでしまった。
でも、お陰でゆっくりいろんなことを考えたり、試したりも出来たので、
結果的にはすべて良い方向に進んだと思う。
そういう時間を与えてもらえた幸運に感謝している。
それに、本来であれば、何倍ものバジェットが無ければ出来ないことを、やらせて
くれたスタジオビビッドの協力無くしては、この作品は生まれなかったと思う。
そして、なにより、僕を信頼してくれて、まったく自由に思い通りに作品を作らせて
くれた、クライアント=鹿島建設には、心から感謝している。

この作品のタイトルは、『Memory of the Earth』邦題は『美しき地球の記憶』と
つけた。何世代も先の僕の孫達が、おそらく今とはまったく様変わりしているで
あろうこの地球で、この作品を見て、ああ、あの時代の地球はこんなに美しかったのだ、
ということを伝えたくて、この作品を作った。これは全ての僕の作品に共通する
テーマだ。次の世代に、今の時代の地球の美しさを伝える。
それが自分の仕事だと思っている。
『美しき地球の記憶』はハイビジョン映像で撮影され、音は今可能な最高レベルの
デジタル録音で収録した。それだけに、このクォリティーを再現出来る環境が
整ったところで、より多くの方々に見ていただきたいと思っている。
どうすれば良いのか、それはこれから考えていこうと思っているのだが、
何か良いアイデアがあれば、私信メールででもご提案いただければと思う。
またこの作品は東京メトロ有楽町線、護国寺駅の側にある鹿島建設の『目白プレイス
マンションギャラリー』で今月末より、一年間流される。http://www.nomu.com/new/mejiroplace/
お近くの方はそちらの方に、どうかお立ちよりいただきたい。

その12

屋久島の風景です。

↑紀元杉近くの山の上から。
これから朝日が出てこようという朝焼けを木々のすきまから見たところ。
この夜の世界から朝の世界に移り変わる時間帯が一番好きだ。

↑前の写真を撮った後、山の上で録音して、その帰り。
林道が開けたところからから見た朝の風景。
朝日は顔を出してから登っていくのがすごく早いように感じる。
これ、日の出からまた1時間くらいしか経ってない頃だよ。もうこんなに日が高いもんね。

↑まだ日が高い遅めの午後。雲の間から光が放射線状に差してとてもきれいだった。
右下の岩の上に座っているのは、小笠原から遊びに来たという女の子。
僕が録音している間中、ず〜っと海をながめていた。

↑日が落ちた後の薄明かりのいなか浜。
この日は雲の中に日が落ちていった。淡い色合いの夕焼け。
真っ赤な夕焼けもきれいだけど、こういう色合いの夕焼けも気分がしっとりして
気持ちいいね。

その11

自然音の録音を始めてもうずいぶんになるが、人に自然音のCDを作っています、
というと必ず訊かれることがあった。
『映像はないのですか?』
そう言われるたびに、
『はい。僕は音を聴いてもらいたいので、絵はあえてつけないことにしています。』
と答えていた。
それはもちろん本音なのだが、もともと映像も大好きなので、いつかは映像の
ついた作品を作りたいとは思っていた。だけど、自然の映像の難しさも判っていた。
というのは、それまで数多くの自然を扱ったビデオやDVDを見ていたが、心に
残る物がなにもなかった。
どうしてビデオで撮るとあの美しい自然の感動がちゃちいものになってしまうのだろう?
どうして、夜中の天気予報のように、安っぽいものになってしまうのだろう?
自然の美しさを映像でも伝えたい、いったいどうすれば・・・
これは長年の課題だった。そして自分なりに考えて、いろんな方法を模索していた。
ひとつの鍵は、目から入る情報を制限することだった。
人間の知覚は、正確には解らないが、相当のウェートが目から入る情報に偏る傾向に
ある。それは知っていた。人間は目から入る情報を重視する。
目と耳と両方から入る情報に対しても、その注意力のほとんどは目に集中する。
僕はなんとかもっと音を聴いてもらいたかった。
あるとき、自然の写真ばかり撮っているカメラマンの作品のスライドショーを
見た。そのときバックで音楽も流れていたのだが、それはそれは素晴らしい作品だった。
自然の美しさがストレートに心に届いてきた。写真は動かない。だからいいのだ。
そのことに気がついた。ビデオは情報量が多過ぎるのだ。ビデオを作る人は映像
だけで、見るひとが退屈しないように、数多くのカットを使う。
それは自然を楽しむテンポ感とはかけ離れているのだ。
カット数を極力減らし、ひとつのカットを出来るだけ長く見せる。カメラを
動かさない。そうすることで、目から入る情報量を制限し、目と耳との情報量の
バランスをとってみようと思った。
今回の屋久島のビデオではそれを初めて試すことが出来た。
多くの人が共鳴してくれた。感動してくれた。それが嬉しかった。
ハイビジョンの映像は素晴らしく美しい。静止したカットでもじっと見ていても
飽きるどころか、引き込まれていくほど美しい。そこに自然音でストーリを構成し、
音楽を少しだけ加えてみた。そこには自分が長年頭のなかで思い描いていた世界が
広がっていた。

大川の滝を下ったところにある小さな入り江での夕日。
素晴らしく美しかった。

そのじゅう

今日は屋久島の美しい風景をご紹介します。

この日の夕方は、宿の裏の川が、ホントに水が流れているのかな?
って思うくらい穏やかで、鏡のよう。
そこに暮れていく空が映り込んで、メチャクチャきれいだった。

そのときの空はこんな感じ。

翌朝、早起きをして、ひとりで山に録音に出かけた。
朝といっても4時くらいなので、まだ真っ暗。そのときに出ていたお月様。
この写真は、屋久島ビデオ作品 「memory of the earth」 の
エンディングに使った。

トラックバック

僕が東京に来てから会った人達が、ブログに僕のことを書いてくれている。
まとめてご紹介します。
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渡嘉敷さん
ニューヨークに長年在住されていた他、世界の各地を飛び回っているバリバリの
ビジネスマン。この方のブログはめちゃくちゃ面白くて僕もいつも読ませて
いただいている。
(以下本文)
ジョーさんに初めてお目にかかった瞬間、「あ、俺って仕事で心荒んできてる。
いけない」って思いがつらぬいた。 自然音楽家 ジョー・奥田・・・・

【続き】→ http://blueheaven.exblog.jp/m2005-02-01/#2079088

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とかしきなおみさん
渡嘉敷さんの妹さんで、杉並区の区会議員をされている。
強烈なパワーと沖縄を愛する気持ちを持ったスーパーウーマン。
(以下本文)
集会の後、地元で打ち合わせ、久々に晴れたので街頭演説、そしてお通夜に出席
してから、兄の友人の自然音録音家のジョー・奥田さんと兄と3人で、・・・・
【続き】→ http://naomitokas.exblog.jp/d2005-04-16
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吉田菜穂子さん
スリランカに強く思いをはせるキャリアウーマン。
仕事の分野は、インテリア、貿易、ボランティアと幅広い活動を
精力的にこなされている。
(以下本文)
今日午後は、ネイチャーサウンドアーティストのジョー奥田さんのスタジオへ
おじゃまし、たっぷりお話を伺いました。ジョーさんの作品を聞くと・・・・
【続き】→ http://ny007.exblog.jp/m2005-04-01/#285983
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山川 “bananan8″さん
僕の東京での活動を応援してくださっている方。
某ラジオ局にお勤めで、自然が大好きなひとです。
(以下本文)
自然音楽収集家のジョー奥田さんがジョー奥田ドットコムを立ち上げた。
世界に数人しかいない職業の人で・・・・
【続き】→ http://natsuyam.exblog.jp/i5

そのきゅう

最初の白谷雲水境での山登りのダメージが癒えたころ、我々はもう一度白谷に
行くことにした。喉元すぎれば、、、というやつであろうか、あの辛さを忘れた
わけでは無かったのだが、それにもましてあの美しさに魅せられてしまったのだ。
おのおの前回の経験から学習し、装備に手を加え、持ち物チェックを入念にし、
いざ白谷へ。
前回は雨だったのに、この日はうって変わってドピーカンのいいお天気。
僕的には嬉しいのだが、撮影班はやや不満そう。というのは、音的にいうと
雨の日はあまり鳥が鳴かないので、晴れている方が嬉しいのだが、絵的に
いうと、苔や木々の緑は雨が降っている方が、色が深くて美しい。
なかなか利害が一致しないな、別行動するか、などといいながら、林道を走る。
さて登山口に到着し、重い荷物をよっこらしょと背負い、さあ出発。
最初の10分でまた吐きそうになるかなと思ったら、今回は大丈夫だ。身体が
慣れたのだな。ふんふん、今日は調子がいいぞ、と思っていると、もりもっちゃんが、
『今日はアカン!こらアカンで・・・』としきりに言い出した。
ここ数日の良いお天気が影響して、森が乾いているのだ。苔もややくすんだ
色になっている。雨の日の森の緑のしっとりと深くやわらかい感じを見ているだけに、
カラッと乾いた森はなにかいまいちグッとくるものがない。
それでも山道をどんどん進んで行ったのだが、最初のつり橋を渡ったときに
休憩動議が発令され、荷物を下ろして3人で会議が始まった。
『議長!提案です。今日の森は撮っても意味がないです。』
『議長、この乾いた森を撮るよりも、外に行ってせせらぎを撮りましょう。』
議長であり隊長である僕は決断を迫られた。それでも先に進みたい気持ちも半分、
無理して行って、何も撮れないくらいだったら別のロケーションで何か撮った方が
良いのではと思う気持ち半分。う〜〜〜ん、、、どうしたもんじゃい?
結論は引き返すことになった。
帰り道の3人の足取りが、心なしかルンルンとしているのがわかる。
情けね〜〜〜!

↑こころなしか表情に安堵の色が見て取れる。(笑)

そのはち

以前にもお話ししたが、屋久島の飯は抜群に美味い。そんなわけで、一同夕食は
最大の楽しみといって良かった。居酒屋系のお店が多いなかで、島に1軒だけ
寿司屋がある。『若潮』というお店である。
今夜は寿司食いに行こうということになり、3人そろってウキウキと出かけた。

僕は去年来たときに一度だけ行ったことがあった。カウンターが空いていたので
並んで座る。生ビールを頼んで突き出しをつつきながら、のどを潤す。
親父さんが、「お客さん、去年もいらしてましたよね?」と聞く。
「はい。でも良く覚えていらっしゃいましたね。」
実はこのやりとりは島に来てからあちこちで何度も繰り返された。空港にある
土産物屋のおばさんにまでそう言われた。どうも一度会うと覚えられてしまう
タイプのようだ。僕はどこでもそうなのだが、特に島に行ったときは、なるべく
土地のひとと仲良くするようにしている。道ですれ違ったおばあさんとかにも
挨拶をする。それが島の外から来た人間の礼儀だと思っている。
それに島の人と仲良くなることで、いろんなことを教えてもらえる。地元の人の
情報はとても貴重なのだ。
そんなわけで、若潮の親父さんも覚えていてくれた。この親父さんは栗生という
集落の出身だそうだ。栗生には浜がある。数ある屋久島の浜の中で、僕はこの栗生の
浜の音が一番好きだ。本当に優しいいい音がする。ただ栗生は屋久島の中でも最も
宮ノ浦の町から遠い集落だ。だからあまり開発されておらず、昔の島の暮らしが
よくうかがえる。それも栗生が好きな理由のひとつでもある。
そのことを親父さんに言うと、本当に嬉しそうに喜んでくれた。栗生は観光客が来る
ところでも無いし、島の外の人間が栗生のことを好きだと行ってくれたのがよほど
嬉しかったのだろう。親父さんは、ちょっと待ってな、というと厨房にひっこみ、
次々といろんな料理を作っては出してくれた。もちろん僕らはかたっぱしからたいらげ
ながら、三岳をしこたま飲んだ。島のひととのふれあうのは本当に楽しい。
(注)この『屋久島ロケ日記』は2005年4月1日から4月12日の間に
行なったロケの記録を元に書き起こしています。

そのなな

さて昨日は、山登りの達成感といい仕事をしたという満足感から、夜は酒盛りだ。
とはいえ、達成感や満足感が無くても酒盛りをしているじゃないか、と言われれば
その通りなのだが。そんなわけで、スタッフ一同、といっても僕を含めて3名は
またもや『潮騒』へ。いつも通りの刺し身ー焼き物ーその他多数のツマミ系+生ビールー
三岳、というお決まりのコースをひと通りこなし、宿へと戻る。
さすがに疲れていたので、一同速攻でふとんに入り3秒で爆睡。
僕のお決まりの夜明け前出発も明日はなし、と決めていた。
そんなことをしてたら死んでしまう。
朝は爽やかに目覚めて、、、と言いたいところだが、身体のあちこちが痛い。
足はどういうわけか痛くないのだが、腰が張っていた。重い荷物は腰にくる。
もりもっちゃんは、足が筋肉痛でたいへんらしい。だから僕と小坂の足が痛くない、
というのが気に入らないようだ。
『ええ? ホント? おかしいなぁ〜〜、オレ足カチカチだぞ、みんなもそうだろ?
え? 違うの? おかしいなぁ〜、ミエ張ってない?』
と、しきりに繰り返す。もりもっちゃんは高校時代サッカー選手だったので、
身体はガッチリしているし、いかにも元体育会系という感じがする。
そんな彼だけが筋肉痛になっているのが不思議だった。
『それはね、もりもっちゃん、僕らは筋肉痛になるような筋肉そのものがないから
筋肉痛にならないんだよ、きっと』と言うと、『そうか、そうだな。』と
納得していた。

さてそんなわけで、今日はちょっと楽しような、ということで夕景のロケハンと
途中目に付いたものは撮る、ということで出発。西部林道から大川の滝あたりを
走り回りロケハンをした。お、ここはいいね〜、という川があったので機材を
降ろして撮影を始める。僕も録音機材をかついで、川のあちこちを歩き回り、
ほど良いスポットを探し回る。右手には三脚にセットしたバイノーラルマイク、
背中にはレコーダー、ケーブルなどを詰めたバックパックを背負って川を横切るため
石伝いに行こうとしたとき、ぬるっ! 濡れた石は苔で滑るのであぶない、という
基本を忘れ、うっかり濡れた石に足を置いたその瞬間だった。
すてーんと見事に転んでしまった。その1メートルほど下は崖のようになっていて、
転び方次第では下まで転がり落ちるところだった。あぶねぇ〜〜!
その転んだときに右手はマイクのついた三脚を持っていたので、反射的に左手を
ついた。マイクは濡らさずにすんだが、おかげで全体中プラス機材の重みが左手に
かかってしまった。もうかれこれひと月以上になるが、左手はまだ痛い。
(注)この『屋久島ロケ日記』は2005年4月1日から4月12日の間に
行なったロケの記録を元に書き起こしています。

対談

analog.jpg
先日、『オーディオアクセサリー』や『AVレビュー』という有名なオーディオ関係の
雑誌を出版している音元出版の企画で、石田善之さんと対談した。
石田さんは、その道の権威と言われる方で、僕も雑誌で何度か記事を拝見したことが
あったので、ちょっと緊張したが、石田さんはとても紳士的な方で、僕の話を丁寧に
聞いて下さった。
自然音を録音するようになったきっかけ、フィールド録音の話、使用している機材の話、
などなど話題は多岐にわたり、とても楽しい時間を過ごさせていただいた。
石田さんご自身もフィールドでの録音をされるので、そういう方とのお話は本当に
楽しい。自然音の話をし始めると、どんどん話題が広がって、あっという間に
予定の時間を過ぎてしまい、後でしゃべり過ぎたのではと少し反省。
このときの話は6月15日発売の『アナログ』という雑誌に掲載されることになって
いるので、興味のある方は是非読んで見て下さい。
読者プレゼントとして、これから発売予定の『Yakushima』のCDも応募者の方
10名に差し上げることになっているので、どうかお楽しみに。

*『Analog』(アナログ)

『Memory of the Earth』

いよいよ屋久島ビデオ作品の仕上げの段階となった。
間にゴールデンウィークがはさまったこともあって、ほぼひと月間、この作業に
かかりっきりだったのだが、自分でも満足のいく仕上がりになったし、見て下さった
方々からもたくさんのお褒めの言葉をいただいた。
作品のタイトルは、
『Memory of the Earth ー 美しき地球の記憶』
この作品をより多くの方に見ていただきたいのだが、ハイビジョン映像+5.1 サラウンド
で再生出来る環境がないと、この作品の持つ本当の深い部分はなかなか伝わりにくいと
思うので、そのへんが今、一番の悩みかもしれない。
いずれ上映会のようなものも出来ればと思っているのだが、もしそのような環境を
ご用意いただけるのなら、いつでも出向いて行くつもりなので、どうかご遠慮なく
お声をかけていただきたい。