伊是名島に来た


伊是名島は美しい。島全体に穏やかな気があふれている。
鳥達が里のすぐそばで楽しそうに生きている。
海の美しさは特別だ。穏やかで、豊かな幸をたたえている様子が
良く分かる。島全体をサンゴ礁が取り囲み、外海の荒い波は
すべてサンゴ礁が受け止めてくれるので、浜は湖のように
穏やかだ。
この島で生まれ育った高齢の方は言う。
「昔は街灯もテレビも無かったので、子供の頃、月の出ていない夜は
本島に真っ暗で、日が落ちたら外に出ることはなかった。
波の音だけが聞こえてきて、島全体が波に揺られているようだった。」
朝は宿の前にあるガジュマルの木に巣を作る鳥達が楽しそうに
さえずる。鳥達は人をあまり怖がっていないようで、人と鳥の
距離がとても近い。すぐ側の木にとまっていて、側によっていくと
こっちをじっと見ながら逃げる様子もない。そしてじっと海を
見ながら、時折仲間達に何かを知らせるように鳴く。仲間は返事する。
またそれに応える。そんなやりとりが延々続く。
人はみな穏やかで優しい。挨拶すると必ず挨拶が返ってくる。
友人や知り合いだからではない。人同士だからだ。
早朝、車ですれ違う時も会釈するようにしている。それが島の
外からやってきた人間の礼儀だと思っている。すると必ず
笑顔が浮かび、「よしよし、それでよろしい」と言っているかの
ように、うなずかれる。島の人に受け入れてもらったと思える瞬間だ。
島民およそ800人。
本当に美しく平和な場所だ。