旅の始まり

その後、沖縄から打ち合わせのために東京へ移動した。
その頃なんとなく気になったのは、あるポスターだった。そのポスターの写真は街角や
雑誌などで何度も目にした。それは元ちとせの『ハイヌミカゼ』というアルバムの
プロモーション用の写真だった。この写真がどういうわけか記憶に残った。
彼女の目がとても印象的だったからだと思う。

そしてある打ち合わせのため、ソニーレコードに行ったときに、社内のあちこちに
貼ってあるのを見た。あ、ソニーのアーティストだったんだ!
打ち合わせが終わったときに、そのディレクターに、
『ねえ、あのCDある?』とたずね、一枚もらってきた。そして聴いた。
『ふ〜〜ん、、、なるほど、、、』
最初の印象は意外と薄かった。そしてロスに戻り、自分のスタジオで作業の合間に
聴いたりしていたのだが、『ふぅ〜ん、、おもしろいな、、』くらいにしか
感じていなかった。それがあるとき、スタジオのソファーに寝転がって何気なく
聴いていたときだった。いきなり心の一番感じる部分に突き刺さった。心をわしづかみに
された。歌詞が心の中にするするとしみ込んだ。彼女の声が身体の中で響いた。
もうそれからはもう彼女の唄のとりこになってしまい、毎日聴いていた。
そのときは、『美しき日本の記憶』というCDのシリーズの第1作目、『川へ帰ろうー
四万十川』をリリースして、しばらくたった頃で、2作目はどこにしようか考えていた
のだが、もう気持ちは決まっていた。
奄美に行こう!
田中一村、喜納昌吉、元ちとせ 。
この三人に導かれるように、僕は奄美への旅を始める。

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